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プログラムとかはこっち

微分の連鎖律とラグランジュ表現

前々から流体力学をやるたびに気になることがある。

流体力学とか連続体力学で基礎となる式として、連続の式というものがある。簡単にいうと「勝手に質量(密度としてあらわされる)が増えたり減ったりすることはない」という趣旨の式で、以下で表される。

\displaystyle\frac{\partial\rho}{\partial t}+v_i\frac{\partial\rho}{\partial x_i}=0\cdots(1)

無論このことに疑いの余地はなく(相対論的な取り扱いが必要なときを除けば)、僕も公式に異議をとなえたいわけではない。

問題は、表現の問題である。ドットをライプニッツの書き方になおすと

{\displaystyle\frac{\partial\rho}{\partial t}+\frac{dx_i}{dt}\frac{\partial\rho}{\partial x_i}=0}

これは微分の連鎖律

\displaystyle\frac{df(\{x_i\},t)}{dt}=\frac{\partial f}{\partial t}+\sum_i\frac{dx_i}{dt}\frac{\partial f}{\partial x_i}\cdots(2)

を用いれば、

\displaystyle\frac{d\rho}{dt}=0\cdots(3)

ときわめて簡単な形で表すことができる。

ところが、少なくとも僕が学部で受けた授業では、(3)の形で出てくることはなく、(1)でしか出てこなかった。それはなぜなのだろうか。

思い当たる理由はいくつかある。オイラー表現とラグランジュ表現というものがある。これは流体力学や連続体力学をやるときに最初に学ぶ連続体のあらわし方で、オイラー表現とは連続体中の物理量を場として見る見方、ラグランジュ表現とは連続体中の微小(古典的)粒子の運動に着目する見方である。

オイラー表現では、速度というのは「速度場」であって、

\displaystyle u_i=\frac{dx_i}{dt}

という式が成り立たせるxが定義できない。一方ラグランジュ表現ではこのx_iは粒子の座標そのものである。

ラグランジュ表現での(3)の持つ意味とは、粒子の感じる密度は不変であるということである。こういうときはわかりやすくするためにわざわざ「物質微分」とか「ラグランジュ微分」といったりする。書き方も

\displaystyle\frac{D\rho}{Dt}=0

と書く。

また、速度の扱いにややあいまいなところが残る。場としての流速は座標の時間微分として表すことができるかはわからない。

というわけで、上記の通り「物質微分であらわすことができる」ということは、式を暗記するコツ程度にとどめておくのがよいだろう。

 

補足:\displaystyle\frac{D\rho}{Dt}=0というのは、統計力学でのリウヴィルの定理に対応する。実際、統計力学の手法を用いれば、流体を流体粒子の集合として扱うことができ、そのとき系にたいしてリウヴィルの定理は成り立つ。

 

浅学のためにおそらく間違っていたり厳密でないところが多いが、指摘いただければ幸いである。