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まじめなことを書きます

ドップラー効果と波数

高校のとき、僕は「ドップラー効果」の導出がどうも苦手だった。それから8年くらい経つことになるが、できる限り普通の人にもわかるように、少し整理してみようと思う。

波動に関する物理量

波動を表す物理量はたくさんある。用語の定義も分野によってまちまちで混乱することも多々ある。

時間に関する物理量

まず、波動とは波源の振動が次々伝わっていくことで起こる。その振動の時間的スケールを定めるものが振動数fである。ただし式変形の都合で角振動数\omegaを単に振動数と呼ぶこともある。f\omegaの関係は \omega = 2\pi f である。また、主に電気系で、振動数は周波数と呼ばれることもある。また振動数fの逆数を周期Tと言い、1回の振動にかかる時間を表す。

空間に関する物理量

全く同様のことを空間にも当てはめてみよう。空間的に同じ構造が繰り返される長さを波長\lambdaと呼ぶ。時間的なものに倣って、分光学ではこれの逆数を波数と呼ぶ。ただし式変形の扱いやすさから、波動力学などでは角振動数に当たる k=2\pi /\lambdaを波数と呼ぶ。

以上を用いると、一般的な波動は三角関数を用いて

{\displaystyle
g(x,t)=g_0 \sin(\omega t-kx)
}

と表すことができる*1

定常波の分散関係

k\omegaの関係を、一般に分散関係と呼ぶ。分散関係は波動の種類ごとに存在し、波動の特性を表しているので、それを見つけることが物理学のいろいろな分野で重要な目標になっている。 定常音波の場合は簡単で、

{\displaystyle
\frac{\omega}{k}=c_s \cdots (1)
}

である。ここでc_sは風がないときの音速であり、単位の組み立てそのままになっている。

波数とドップラー効果

ドップラー効果の導出では「波源から一定時間に放出された波の数が保存する」ことを用いる。これを少し考えてみよう。 風が存在しないとして、音源から観測者に向かう方向を正とした1次元系を考えてみよう。ただし速度v_s,v_oは音速と比べて十分遅いとする。

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音源が静止する系に移ると、空気は常に-v_sで流れている。同様に、観測者が静止する系では常に-v_oの風が吹いていることになる。すなわち実際の音速は座標系によって異なっていることになる。ここで次の2つを仮定しよう。

  1. 実際の音速は媒質の速度と風がないときの音速の和である。
  2. 分散関係は実際の音速が異なる各系で成立する。

この2つと「波数は保存する」ということを用いると、分散関係(1)から次の式が得られる。

{\displaystyle
k=\frac{\omega_s}{c_s-v_s}=\frac{\omega_o}{c_s-v_o}\cdots (2)
}

これがドップラー効果の式そのものであって、変形して振動数fで表すと、

{\displaystyle
f_o=\frac{c_s-v_o}{c_s-v_s}f_s\cdots (3)
}

とよく知られたドップラー効果の式を得る。

まとめ

たくさんの覚えなければならないことが出てきて混乱する波動の分野だが、ドップラー効果は「各系での波数が保存する」ということを覚えておけば簡単に導出できることがわかった。

*1:ここで振動数や分光学での波数を用いると、係数に2\piが出てきて不都合である。